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2002年JFL 第12節 06/10/2002 13:00 K.O.
デンソー 2-3 佐川急便東京SC ○ 多刈谷市総合運動公園多目的グラウンド 曇りときどき晴れ 強風 佐川東京 3−4−2−1システム 「アナタハ奇跡ヲ信ジマスカ?」 誰かからおもむろにこんな問いを投げかけられたとしよう。 平穏な日常生活にあってブラウン管や銀幕の中以外で「奇跡」なるものにお目に掛かる機会があまりない我々にとって、 こんな場合のリアクションといえば、大抵において一瞬戸惑い、また、質問者がどんな信教なのか、妙な物など売りつけられやしないかなどと思索しつつ、 無難な回答を探すといったあたりが関の山であろう。 だが、あの時、あの場所でその瞬間に居合わせた我々に、同じ問いを投げかけたならば、おそらく一様にまんざらでもない笑顔を浮かべ こう言ったであろう。 「奇跡ってやつもたまには悪くないな」 日曜の昼下がりの刈谷は、たしかに、終始かなりの強さの風が吹きぬけてはいたが、 それ以外は、何かが起きる気配を感じるには困難な、実に平和で、いかにもJFL的な程よく弛緩した雰囲気がその場を支配していた。 だが、そこの住人デンソーは、曲者であった。 徳重をはじめとする中心選手の交替により、戦力的に小粒化した印象はぬぐえないものの、かつて幾度にも渡り強豪を苦しめた そのしたたかな試合運びの巧妙さは、なにより昨年佐川急便東京がカウンターの罠にハマり4失点を喫した事がそれを証明してしまっていた。 立ち上がり、風下に立たされた上、久々の実戦に若干動きが鈍い佐川東京。デンソーがそれを衝かないわけはなかった。 開始早々、いきなりキツイ一発をお見舞いされる。3分。混戦の中で、ボールを受けた加藤が 前に出ていたGK加藤竜二(まぎらわしいなもう!)の位置を見てループを決めたのである。 この時、これを単に試合勘の鈍りが招いた失点と納得するのはいささか短絡的であった。 その後もデンソーは佐川東京のパスミスをついては早いプレスからボールを前に運び、ゴール前ではワンツー、ダイレクトプレーで 確実にチャンスメイクしてきたのである。 しかし、このまま沈黙する佐川東京ではない。この日も笠木が確実かつ強靭なポストと果敢なチェイシングで前線の基点となり、 井上は右サイドから低い弾道のクロスを入れる。(強風の為、ハイクロスはほとんどなく、グラウンダーを多用) さらにはウズベク帰りのマサオが風格すら漂わせるボールキープで魅せつける。 悪いながらも個々に「らしい」プレーが出始めれば、もう話は早い。 15分。ヘッドでの競り合いから右サイドに抜け出した笠木が、中央で待ち構えるマサオにプルダウンのグラウンダークロス。 マサオはいともたやすく右足でこれを突き刺し、同点。 デンソーは、序盤前がかりになって先制点を奪い、逃げ切りを図るという、今季これまで佐川東京と対戦した大体のチームの パターンと同じく、彼我の実力差を補うためのフットボールにおける常套手段を実行してきた。 ただし、その他の大体のチームと違い、プレーのひとつひとつに説得力を伴わせていた。 当たりが強くスライディングを多用する守備は、こまやかな足技やパス交換を旨とする佐川東京アタッカー陣にとっては 厄介な、っていうかもうハッキリ言って、かなりえげつなく、泥臭く攻めのリズムを狂わせた。 これまでの相手ならば、序盤多少旗色が悪くとも、徐々に相手のスタミナが落ちると共に佐川東京が流れをつかむというのが パターンであったが、デンソーはそれを許さなかった。果たして、試合は膠着した。そのまま前半終了。 後半開始早々、佐川東京は小幡に替わって馬目を投入。トップ下やや深い位置でボールをキープしパス出しなどで リズムを作ろうとする。しかし、ペースを握ったのはデンソーであった。いつ失点してもおかしくないほどの 波状攻撃に晒されたが、3バックの粘り強いディフェンスと加藤竜二のハイパーセーブが辛くも危機を凌ぐ。 しかし、試合の趨勢はさらに悪化をたどる。後半開始から10分経過した頃、にっくき「デンソースライディング部隊」の毒牙に掛かり ついに熊谷が倒れる。佐川東京にとって最も欠く事の出来ない彼は、右足首を負傷し、交替を余儀なくされる。 代わって入った津村は、見事につなぎをこなし、よく熊谷の穴を埋めた。 そして、38分。浮きダマのパスを競り合った川村”ゴン”と、”オイサー”伊藤が折り重なるようにして倒れる。伊藤のファウルに見えた、 というのは贔屓目か。無常にもレフェリーの指先はペナルティアークを指差していた。1-2。遂にデンソーがリードを奪う。 「万事休す」 こんな言葉が、頭をよぎる。だが…。男達は、あきらめなかった。(プロジェクトX調) Jとの練習試合で復調ぶりをアピールしていたヴェテラン二人、桂と梶山 がアップを終え、臨戦態勢をとる。ユニフォーム姿となったヴェテラン達の雰囲気漂う背中を見て、ボクは彼らに賭けようと思った。 しかし、残る交替枠はただ一つ。大貫監督は、ためらっていた。(プロジェクトX調) シャドーの位置に桂を入れ、中盤を強化するか?左サイドの梶山を投入し、クロスやセットプレーで活路を見出すか? 正解はどちらなのか? しかし、彼には選択の余地すら与えられなかった。80分。これまで左サイドを駆け回り、攻守に効いていた川瀬が左サイド で突破を図りクロスを上げようとしたその瞬間、地面を蹴り、負傷退場の憂き目にあったのである。 かつてない危機。自動的に最後に切られるカードは梶山となった。 後半、40分経過。気付けば伊藤琢矢が前線に上がり、4トップみたいな形になっていた。青梅に敗れたときと同じパターンだ。 否が応にも焦燥感を掻き立てる。一方、何故かデンソーはディフェンシブな手を何一つ打ってこなかった。 禍福はあざなえる縄の如し。何が良い方向に作用するかはわからない。昔の人はよく言ったモンだ。 替わって入った梶山の糸をひくようなクロスボールが、ファーサイドの馬目に入ったのである。馬目はマークを一人背負いながらも、ヘディングシュート。 ジャトコ戦を彷彿とさせる良くコントロールされたボールはゴール左スミへ吸いこまれていった。2-2。同点。時計は44分。 「もう1点!もう1点!」 現金なもので、こうなるとボク達はアウェイチームとしての謙虚さなどかけらもないコールをすかさず出していった。 ドロー?冗談じゃない。勝たなきゃ意味がない。いや、勝つだろうどう考えても。っつーか勝て! メインスタンド脇の一角に陣取っていた全員が一応にそういう気持ちでいた。 運命のロスタイム。マサオが左サイドで良く持ちこたえてペナルティエリア内の笠木の足元へ。 笠木はペナルティエリア内を左斜めに切りこむ。 次の瞬間。まるで何かに魅入られた様にそれについていってしまったGKと、何かの冗談のようにペナルティエリア中央でフリーでいた馬目が同時に目に入った。 勝利を確信した。 2-3。ベンチが弾ける、ボク達も弾けた。逆転サヨナラ。 戦い終わって。 僕の真後ろで試合中太鼓を叩いていた男がこう呟いた 「カンプノウみたいだ…」 忘れもしない、3年前の欧州CL決勝。マンチェスターユナイテッドがバイヤンミュンヘンを破ったのも こんな逆転劇だった。彼はその場にいたのであった。今日は刈谷がカンプノウになった。 「いやあ、おもしろい試合でしたねえ!」」まるで他人事のようにボク達にこう言って笑う其田コーチ。 スタジアムの外で屈託ない笑顔を見せる選手たちの姿は、奇跡の演出者などとという大仰なものよりは、純粋な, 愛すべきサッカー小僧といった方が近い感じがした。 こうしてボク達は奇跡の目撃者となった。(K) ![]() 06/10/02 @Kariya ©Copyright 2002 MANOME, Shigeki, tOkYo rAiDeRs & iNaMoKo 感動的であった。デンソー側からすれば、不愉快この上ない結果だったろうが、応援している身としては堪えられない結果である。 後半38分にPKをとられるまでは引き分けが頭をよぎっていた。普通、アウェイで引き分けならOKなのだけれど、今はとにかく勝ちにこだわらなくてはいけない状況。負けは許されない。そんな中でPKを決められる。2対1。残りはロスタイムを入れても10分ほどだろう。最悪の負けというシナリオが現実味を帯びてくる。が、筆者は、逆転するのではないか、という気分だった。いや、結果論ではなく、本当にその時思ったのだ。 というのも、この試合、デンソーの前線からの速い潰しとワンタッチプレー、守備陣のがんばり。そして佐川東京の攻撃がワンテンポ遅れ気味、つまり足元へのパスが多く、二つ先、三つ先の動きがなかなか見えなかった。そういうこともあり、点が入りそうな気がまったくせず、このまま引き分けか、と感じていたのだ。 そこにPKである。フットボールの場合、点が入ると、えてして試合が動くものだ。川瀬が怪我をして梶山が入る。するとロスタイムに入ろうかという時間、その梶山がアーリーでクロスをあげ、馬目が決める。デンソー側は引き分けでよしとするのか、勝利を狙うのか意思統一が遅れていたため、バックラインが中途半端にあがりぎみ。そしてロスタイムに再び馬目が決め、ついに逆転。感動的な幕切れとなった。 大塚とHondaがスコアレスドローだったため、これで1位のHondaとは勝点3、得失点1の差に縮め、3位大塚には勝点3の差をつけた。次節はいよいよ大塚戦。ここで勝てば大塚に引導を渡せるだけでなく、27日のHonda戦を真の天王山とすることができる。その権利を得るためにも今日の勝ちは非常に大きかった。そして、これからの残り5試合も、勝ちにこだわらなくてはならない。 もちろん今日のような風が強い状況では、何が起こるかわからない。そのためきちんとリードすれば、大過なく試合を閉じられたはずだが、とにかく今日は、ドラマチックに勝利したことを素直に喜びたい。たまにはこんな試合があってもいい、と結果が良かったからいえるのだが。 フットボールの試合は本当に生き物だ。(Y) ![]() 06/10/02 @Kariya "Landscape of KARIYA NOU" ©Copyright 2002 tOkYo rAiDeRs |