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第82回天皇杯東京代表決定戦”東京都サッカートーナメント”決勝戦  
06/09/2003 15:00 K.O.

横河武蔵野FC 0-3 佐川急便東京SC

国立西が丘サッカー場  快晴

佐川急便東京SC 3−4−2−1システム
     笠木(馬目)
   小幡(山本)山根
米山 熊谷 津村(冨山)井上
  川村 鈴木 伊藤
       加藤
<その他リザーブ>佐野、田島

天皇杯の東京都代表を決めるひっそりと熾烈だったトーナメントは、残暑厳しい聖地西が丘でフィナーレを迎えた。

東京代表が決まる瞬間を見届けようと、聖地を訪れたフットボールファンは両チームの観客動員数からすると異例の800人強。数台のTVカメラがピッチを見下ろし、NHKと 当日21時からの録画中継を敢行した東京メトロポリタンTVの旗が燦然と掲げられていた。佐川東京にとっては2年前の天皇杯4回戦セレッソ大阪戦以来の 「TVマッチ」ということになる。UHF局とはいえ、もちろん地上波初登場である。その影響からか、メインへの一般入場は禁じられていた。

決戦の相手、ホーム扱いの横河武蔵野は、4-2-3-1の布陣。トップには村山、左サイドにはエース池上、左サイドの後ろには悪魔の左足をもつ金載東、中盤要の位置にFC東京からレンタル移籍中の諏訪園 を要する布陣。ベンチにはJFL前期夢の島の佐川東京戦で2点目のゴールを上げた末吉が控える。ほぼフルメンバーか。こうしてみると、敵ながらそれなりにタレントは揃っているなという感じがする。準決勝では亜大を0-4で撃破し、意気揚々決勝に望んでいる。

対するアウェイ扱いの佐川東京。竹谷、嘉悦を故障で欠き、エリース戦で決勝ゴールを上げたエースマサオもケガのため、ベンチスタート。 準決勝で代役を務めたのは笠木と小幡だった。笠木はポストプレーと下がっての守備に、小幡は裏を狙う動きと、前線でアグレッシブな動きを見せ続け、不安どころか期待感すら抱かせる。 この層の厚さは本当に強みだとつくづく思う。

この試合、勝敗を分けたポイントがいくつかあった。一つは横河武蔵野の左サイド、一つはダブルボランチ、一つは途中交代。

序盤は両チーム様子を見る静かな立ち上がり。横河武蔵野はキーマン諏訪園を基点にシンプルにパスをつなげ、左サイド中心に切り崩しにかかる。 10分過ぎ、その諏訪園から横河武蔵野の左サイド、佐川東京の右サイドの裏に一本のパスが出ると、完全にフリーになっていた池上が呼応し、PA内に侵入。 ダイレクトでこれを狙うも、キーパー加藤の正面を突いた。思えば、これが90分通じての最大のピンチだったかもしれない。

佐川東京は、ここ最近のカタチとして定着しつつある、井上公平が下がり目に位置する変則4バック的な布陣。序盤の横河武蔵野の左サイドからの展開をしのぐと、 じょじょに佐川東京が中盤を掌握し、試合のペースを握り始める。左の米山、右の井上から鋭く、説得力のある早いタイミングでのクロスが中央で待ち構える笠木を狙って入れられる。 笠木は闘志を前面に出したプレーで、何度となく惜しいシーンを作り出すも、横河武蔵野のCBが常に上手く身体を寄せていたため、完璧に捉えることは出来ない。 この試合、両チームのディフェンス陣は決して消極的な守備に頼ることなく、常に高い位置にラインを保ち続け中盤をコンパクトにし、局面でも気合のこもったディフェンスを見せ続け、 試合を引き締めていた。

両チームの各ポジションで最も出来の差が激しかったのは、ボランチだった。 目立たないが津村は中盤でのスペースつぶし、つなぎ、攻撃時には機を見て攻撃参加し、味方のスペースを作ったり、ミドルを狙ったりとTV解説の財徳健治氏をして納得せしめた実にニクい働きを見せた。 そして熊谷は、キープ&展開のパスの絶妙なさじ加減で、中盤のタクトを振るう。その前のトップ下のスペースには山根、15分過ぎくらいに鋭いミドルを狙うと試合は佐川東京ペースの様相を呈してきた。

先制点は26分。左サイドでパスを受けた米山が絶妙な浮きダマのパスをゴール前に入れると、ディフェンスラインの裏をついて走りこんだのは小幡。こうした動きは小幡の真骨頂だ。 ゴール向かって左の角度の無いところで追いつき、迷うことなく左足ダイレクトであわせると、逆サイドネットに流し込んだ。ゴラッソ!この上ない。

井上公平がタイミングよく攻めあがってはクロス、または鋭いミドルを狙ったことで、横河武蔵野の左サイドバック金載東は守備に忙殺され、攻めあがるシーンはほとんど無かった。 FKも枠を捉えることはなかった。横河武蔵野の主要な得点パターンのひとつ、北朝鮮A代表のキャップを持つ男金載東は沈黙した。

佐川東京優勢のまま、前半は終了。後半、横河武蔵野が動いた。主砲末吉を投入。ベンチに下がったのは前半あまり機能していなかった村山ではなく、中盤の中島だった。 2トップに変更して、とにかく前線にポイントを作ろうとする。末吉は、ディフェンスラインの裏をとる動きを何度か試み、良いカタチをつくる。後半頭からしばらくは、横河武蔵野がボールポゼッションで上回る。

佐川東京は、横河武蔵野の抵抗を泰然と受け止め、追加点の機をうかがう。最終的にはトーナメント無失点を完成した加藤竜二の落ち着きぶり、鈴木俊を中心としたディフェンスラインの安定感は特筆すべきものがあった。 普段たまに顔をのぞかせる、ボール奪取後のクリアorつなぎの判断の悪さなどミスもほとんどなく、点をとられる気がしなかった。 この時間帯をしのぐと、暑さと攻め疲れからか、横河武蔵野の中盤の運動量は目立って低下。バイタルエリアから最終ラインの裏にかけて、スペースが空き始めていた。 57分、佐川東京は、これを待っていたかのように笠木に替えて仕事人馬目を投入。例によって馬目が前線で動き回り、疲弊した横河武蔵野の中盤と最終ラインを容赦なくかきまわす。山根が裏のスペースめがけてスルーパス、ドリブルでつっかける。

65分経過。試合が佳境に入る。横河武蔵野も座して死を待つわけではない。諏訪園からの浮きダマのパスをPA向かって左の裏のスペースに走り抜けた村山がダイレクトで狙うが、加藤竜二が難なくセービング。この直後横河武蔵野が動く。この試合、中盤でもっとも可能性のあるパスを出していた諏訪園を下げ、上田を投入。もしかすると、その直前にくらっていたイエローカードが影を落としていたのかもしれない。 これには助かった。

67分。試合の流れが完全に佐川東京に傾きつつある中、大貫監督はとどめとも言える一手を打った。殊勲の小幡に替えて、エースマサオを投入。早めに動いた横河武蔵野古矢監督に対して、満を持して振るった采配はピタリと的中し、明暗を分けた。 問答無用のファーストタッチ。熊谷からのピッチ中央を縦に切り裂くスルーパスに抜け出したのはマサオ。その前に熊谷に山根からのマイナスのパスが出た瞬間、ラインを詰めてしまっていた横河武蔵野CB渡辺と立花が必死に戻る。ゴール向かって左のスペースに完全フリーで抜け出したマサオは、出てくる山岸を あざ笑うかのようにゴールに向かって斜めに容赦の無いグラウンダーを流し込む。戻ってくる2枚より先にそこに走りこんだのはやっぱり馬目だった。スライディングでクリアを試みる渡辺と立花より一歩先にダイレクトで叩き込んだシュートはゴール天井のネットを気持ちよく揺さぶった。 王手だ。

その後も佐川東京の攻勢は変わらない。横河武蔵野はさらなる苦肉の策として、この日奮闘したCBのうちの一枚、渡辺を削って、石本を投入。とにかく一点を奪いに来るが、これは遅きに失した策であろう。疲労の上、2度目のシステム変更でバランスを崩した 守備は佐川東京の攻撃を受け止めるだけで精一杯のように見えた。勝利目前の佐川東京は、津村に替えて冨山を投入し守備固めに入る。89分ロスタイムにはPA内でマサオにバックタックルをカマした厄日の金載東がファウルを取られ(微妙だったが)PK。これを熊谷が決め。0-3。トーナメントは終わった。

東京サッカートーナメントは、佐川東京が始めて「東京代表」の肩書きを得る、という結果で日程を終えた。ある意味東京らしいアッサリ風味のセレモニーを終えた選手たちが、トロフィーを持ってゴール裏までやってくる。トロフィーを掲げる「ミスター天皇杯」佐野智之。ささやかなフィエスタは一般客も参加の三本〆というベタなチョイスながら盛り上がりつつ幕を下ろした。

濃い3週間だった。大学勢も含めて「東京」のレベルの高さをイヤと言うほど実感した。…な・の・に、これでもまだ天皇杯出場の権利を得た「だけ」である。しかし、苦しみながらも最後まで切らせることなく一発勝負の3連戦を勝ち抜いたことは、きっと、選手たちにとって大きな糧となったであろう。何より無失点というのが誇らしい。一点さえあれば、絶対に勝てる。それが佐川東京の本来の強さだ。

実は、決勝戦のこの試合、戦前の予想として佐川東京が問題なく勝つと見ていたファンは少なくなかったようだ。どうしてもビビりな自分は終了の笛が吹かれるまでわからないというクチだが、これまでの2試合にはなかった早い時間帯での先制点を目の当たりにした瞬間、内心少しホッとしたものである。横河武蔵野が予想に反してラインを上げて攻撃的に来たこともあるが、確信を持てた。横河武蔵野が意外にもオフェンシブに来たのは、九曜と殴り合い、亜細亜大学に4点を取って勝っていたという背景も影響していたかもしれない。夢の島での敗戦時と同様、徹底的に引かれたらまた違う展開だったであろう。 リアルなゲームプランを立て、確実に遂行した方が勝った。単純な順位や戦力差ではなくそういったことも含めて「問題なく勝てる」と、見ている人は見ていた。

ゴール裏からの「オーヌキサガワ!」コールにTVインタビューを思い切り邪魔された?大貫監督は、試合後に「守備のバランスを念頭においた結果」と極めて冷静に振り返るとすぐに、「Honda、引き分けたね」と早くもリーグ戦に切り替えるようなコメントを残した。Honda、大塚との勝ち点差は4。なかなかのシチュエーションだ。新たなる戦いが、また始まる。(K)




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