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JFL 第1節  28/03/2003 13:00 K.O.

佐川急便東京SC 0-4 デンソー

江東区夢の島陸上競技場  晴れ

普通に勝てるだろう、という僕の認識が間違っていた。鈴木俊がペナルティエリア内で苦肉の策のファウルを犯し、致命傷を通り越した3失点目となるPK&赤を貰う光景を見て、そう思った。

この試合のわずか二日前、僕は新砂運動場にいた。普段スタジアムで配っているフリーペーパーの企画として、開幕前最後の練習を終えた其田監督にインタビューを行ったのだ。

奔放なプレイスタイルが今でも語り草になっている、きさくで陽気なかつての名選手は、話の中で、今季のキャッチフレーズとしてこんな言葉を言った。

「継続、連続、連動」

「連続」とはボールを常に動かし、連続的に試合を動かしていく事。「連動」とは、それにより動いているひとつのボールに対して、全員で連動したアクションを行い、試合を作っていく事。だと言う。

本当に失礼な話だが、僕は少し驚いてしまった。逆風吹きまくりのこの状況下において、これほど明確なビジョンを持ってシーズンに向かおうとしているとまでは思っていなかったのである。すっかり感心してしまっている僕を見据えて、其田監督は自信に満ちた表情で、大きくうなずいた。「監督」の表情をしていた。

「連続」して「連動」したフットボールは、すなわち前線から最終ラインまでシステマティックに動ける、ということが条件であり、同時に完成形であろう。

この試合、佐川東京が見せたフットボールに、その「きざし」は濃厚に漂っていた。だが、自分たちがイメージするプレイが、ピッチの上では実現できない。思い通りのプレイが出来なかった選手たちが、天を見上げる光景があった。 スペースか、足元か?サイドか、中央か?勝負か、ディレイか?押し上げるのか、我慢するのか?タメて待つのか、簡単にはたくのか?いくつものすれ違いが、やがて大きくなっていき、無得点の4失点となった。

もうひとつ。ハーフタイムで、ある人は「試合運びの差」だと言った。その通りであろう。事実、2失点するあたりまでのボールポゼッションと、シュート数(18−7。ただし「枠内シュート」の数ではそれほど差がない。)では 圧倒的に佐川東京であった。だが、この単純な比較は、勝敗を論じる上でほとんど意味がないということは、ここ1、2年のまさしく佐川東京の試合を見ている人にはわかることだろう。

更に言うと、あくまで僕個人的な感想としては、この試合のデンソーのチーム全体の動きそのものはあまり良いとは思えなかった。動きは鈍くとも、立ち上がりから佐川東京の攻め手をしっかりと抑え、勝負どころを見極めていたデンソーは、FW脇が左サイドから中澤を突破して上げたクロスに堀がつめた先制点の流れをつかみ、攻めに転じてきた。直後にピンチがもう一度あった。 これも、チームの熟成度の差、と言える。デンソーは忠実なチームだ。

後半から竹谷を投入、竹谷のポストプレーで前線にポイントができた佐川東京は反撃を試みるも、老獪なデンソーによる教科書どおりのカウンターをくらい失点を重ね、ジ・エンド。運動量もイマイチ少なく(体力的な要素以外に、意思の疎通を欠いていた為、効果的なオフザボールの動きができなかったからだろう)、攻守それぞれの局面において「粘り」が効かないプレイが多く見えた。何人かは問題な選手がいたのも確かだろう。

本来、佐川東京は、ホームでデンソー(良いチームだが…)相手に0-4などという体たらくが許されるチームではない。だが、今回に関してだけは、僕は、むしろ「0-4」というわかりやすいスコアも含めて、不謹慎だが「良かった」と思う。 試合の中では、中盤でボールを奪ってから素早くテンポよくフィニッシュまで繋ごうとする姿勢など、やろうとしている事はピッチから立ち上っていた。「きざし」はあるのだ。また、試合後、ある人はこういった。

「負けも含めて、フットボールで一喜一憂できる日曜の午後が帰ってきたということで…」

そうだ。そういうことなのだ。まずはその今を楽しむ心の余裕だ。確かにさまざまな不利な要素はある。もしかしたら、このフットボール日和の3月28日の午後の夢の島に、なにもなかったかもしれないのだ。こんな背景から、無難に手堅くシーズンをこなそうとしても誰が責められただろうか?しかし、佐川東京は、そうしなかった。逆風に向かって守りに入ろうとするどころか、さらに高度なフットボールを志向した。困難な道を選択した。 「準備不足だとは思わない」とは敗戦後の其田監督の弁だ。その通りだろう。志向するものの実現に時間はいくらでも必要だ。不足もなにもない。

ひとつ、説明を忘れていた。キャッチフレーズの冒頭「継続」とは、「1シーズンを通じて長いスパンで、自分たちの目指すものを追い求めていく事」である。 間に合わせのフットボールなど、僕たちは見たくない。焦る必要はないんだ。これから実直に努力して、造っていけばいいじゃないか。そして、その完成は佐川東京の優勝を意味するのだから。

この日「きざし」を感じて僕は確信した。今シーズン、佐川東京は優勝する、と。(K)




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