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JFL 第17節 11/07/2004 14:00 K.O. 佐川急便東京SC 4-2 栃木SC 江東区夢の島競技場 雨→くもり→晴れ 試合開始前、それまで晴れていたのに雨が降ってきた。東京湾岸を臨む夢の島競技場の向こうの空には稲妻が走っているのさえ見えた。運営スタッフの方と言葉をかわすと、 今日は、ピッチの毛足が長いため少しの雨でもかなり水分を含んでしまう、との事であった。空模様とともに、なんとなく波乱の予感はしていた。 気象に左右されるというのもそうだが、思えばフットボールとは、ルールに関してもレフェリーの裁量に任されるところが多い部分など、そもそも足でボールを扱おうというところからして、非常に「不確定要素テンコ盛り」(by湯浅健二)なスポーツである。 だからこそ、古今数多くのドラマがピッチから生まれ、人々は熱狂する。 その「不確定な要素」を補完し、少しでも目的通りの結果を導き出そうとするものがタクティクス(戦術)や、ディシプリン(規律)といった言葉で表されるさまざまな手法である。しかし、ともすれば不安定になりがちな試合そのもののコントロールは、といえばこれはやはりレフェリーの裁量次第という事になる。 さて、佐川東京と栃木のこれまでの対戦成績は、佐川東京の1勝3分け2敗、正直拮抗している。一戦一戦の内容を振り返っても、最後までどう転ぶかわからない激戦ばかりであった。今季前半のアウェイ戦は正直、凡戦の結果佐川東京が苦も無く栃木の術中に嵌まり敗れたが、時は過ぎ、彼我の状況は異なっている。 復調し3連勝中の佐川東京と、クラブ史上初の4連勝中でイケイケの栃木の戦い。ホンの少しだけ頭をひねれば、今節行われたどのカードよりも「難しい」カードの筈であった。 それなのに。ああ、それなのに。この日主審であった一級審判の田尻智計氏は、この難しいカードを裁くにはあまりにも若く、あまりにも心にゆとりがなさ過ぎた。誰も希望することなく、結果として彼は筋書きの読めないサスペンスドラマ(ドタバタコント)の演出家となってしまった。 序盤からやや栃木が優勢のゲームであった。これはある程度予想通り。栃木は中盤に下がったりサイドに流れる事もいとわない長身FW若林のポストプレイを起点に、シンプルにサイドを使って攻撃を仕掛けてくる。右サイドでスピードのある石川大がうるさい。鋭さはあるが、やや厚みには欠ける印象。しかし、これに対する佐川東京の守備は、鈴木俊を故障で欠いた3バックが若干バタつき、やや不安ではあった。攻撃は、おちゃめな竹谷とケガ明けのゲームキャプテン馬目の2トップを狙ってロングやクサビを狙って当てていく展開。 が、栃木のソリッドな3バックの前になかなかチャンスには至らない。その間、田尻氏は、既に不安定なレフェリングに終始し、早くも信頼を失いつつあった。 そうこうしている内に、第一のミステリーが佐川東京のPA内で起こる。微妙なタイミングのファウルを加藤が取られてPK。百歩譲って、このタイミングはファウルで、PK、というのは認められたとしても、 田尻氏の掲げたのはレッドカードであった。名目は「手による得点機会阻止」とのこと。…解せない。加藤が相手の突破を手で防いだのはPA内で、だいいち加藤はGKだから手をつかうのは当たり前である(苦笑)。それに、もう一枚のマーカーが身体を寄せていた。(このチャージで倒れたようだったが…)加藤のタイミングが微妙だったとしても、これが「決定的」とは言えただろうか?誰か説明してくれ(笑)。ともかく、加藤は退場となり、そのワリを食うカタチでマサオが佐野に交代。このPKを佐野が意地でストップ!凄ぇ!…一筋縄ではいかない試合の行く末を予感させた。 さて、ゲームは順調に荒れてくる。それこそ危険な競り合いに中澤が倒れる。頭部から流血した中澤が治療に出るとピッチ内は9人に。混乱に乗じて中澤のサイドから攻める栃木のシュートが佐川東京の選手に当たり、ゴールイン。栃木先制。え〜。である。 不条理な展開は続く。包帯を巻いて戻った中澤と、若林がPA内でロングボールを競り合って倒れこむ。ぴぴー。PK。…またか!正直、競り合った中澤にはなんら不正なものは見られなかった。これがファウルでは、DFは商売あがったりである。茅島に決められ2失点目。普通ならここで心が折れる。 35分には馬目が倒されて、PKを貰う。池田が決めて1-2。まあ、正直なところ帳尻を合わせた、という事だろう。醜い。(苦笑) あわれ田尻氏は、一枚目のレッドカードとPKで自ら下した「基準なき基準」に自ら嵌まり込んでしまっているようであった。 田尻氏の狼狽ぶりは止まるところを知らず、池田の胸元へ鋭角に肘を入れた栃木DF遠藤に対してレッドカードを提示。うむ、あれは確かに非常に危険なプレイだ。プライドやK−1でやっても即失格だろう。これで人数は10人同士、なんとかなるな。などと、呑気に思っていたがどうも様子がおかしい。件の遠藤は元気にプレイをしている。赤が出たのは遠藤ではなかったか?それにしても人数が減ったような感じがしない。ひいふうみいよう…。11人いるじゃん!何だよ、あの赤は! まあ、ジャッジがどちらかに寄る、というのは今までもままあった事ではあるし、基準が一定しなかったり、吹かなくてもいい笛や、逆に吹くべき笛が吹かれない事など…、まずいレフェリングはいくらも見てきて、われわれもある程度の耐性が出来てしまっている。レフェリーも間違いはある。人間だもの。だが、最低限、重大なケガに直結するプレイへの態度だけはしっかりして欲しい。大事な選手が壊されては堪らない。ホント。頼みます。 混乱のゲームは後半に。栃木はHTの岸田→吉見を皮切りに攻撃的なカードを切ってくる。連勝しているここ数試合と同じパターンだ。栃木としてはプレゼントされた優位を良しとせず、そのまま攻めたいということだったのだろう。だが後半に入り、時間が過ぎるにつれて、栃木の攻撃から鋭さが鈍ってきたようであった。例のジャッジで歯車を狂わされていたのは、むしろ優位に立った栃木のようであった。劣勢と見えた佐川東京は、怪我をしても必死で相手に食らいついた中澤や佐野の神がかったセービングから、徐々にリズムをつかみ始める。 いい意味での開き直りが、あった。60分。この試合のハイライトとなったのは最後のカードとなる交代であった。 熊谷out→中払in これには驚いた。まず、熊谷がケガ以外で下げられる事など、これまで見たことが無かった。熊谷は、佐川東京で最後まで残った「聖域」だった。それが、このような特殊な状況とはいえ、下げられたのだ。姉さん、これは事件です。ちなみに、決して熊谷の出来が悪かったという事はなかったように思う。そして、なにより中払はケガ明けである。こんな荒れた試合に出して欲しくない、という気持ちは、正直、あった。大丈夫なのか? しかし、そんな心配はすぐに杞憂である事がわかった。この交代はハマった。持ち前の読みから、バイタルエリアで見事なボール奪取を見せ、中盤を締めると、広い視野と柔らかなボールタッチからクリエィテビティ溢れる長短のパスを供給。たちまち佐川東京の攻撃のタクトを振るい始めたのだ。終盤には地を這うような強烈なミドルを放ち、逆転のCKを呼び込む場面もあった。大げさではなく、彼がひとつひとつのプレイはスローモーションに見えた。見事過ぎる復活だ。 終盤。試合開始前は雷雨であった夢の島は、突如強い日差しが差し始め、水を含んだピッチがキラキラと輝き始めた。ぐんぐん気温は上昇し始め、栃木の選手達が足を止め始める。そして29分。人数が少ない場合の鉄則、セットプレイを逃さずに決めたのは、この日身体を張り続けた中澤だった。痛々しい包帯の上から構わずヘッド炸裂!35分にはやはりこの日、3バックの中央に入って奮闘し続けた川村ゴンのヘッドも炸裂!たちまち逆転。湧き上がる夢の島のスタンド。 自分達の試合をしていた筈の栃木は、おっとり刀で最後の攻勢を仕掛けてくる。しかし、アクシデントがあったことで逆に鉄壁となった感すらある3バックと、不運な二失点にも心を折ることなくどんどんキレを増してきた佐野のビッグセーブ連発の前に防ぎきってみせた。そして、グランドフィナーレ。これまで何度も何度も何度も何度も倒され、そのたびに不条理な笛(田尻氏はスリップとダイブを見分けられていないようだった。気象状況とピッチコンディションへの想定不足、とも言える)や見逃しに遭っていた池田が、これも献身的な動きと攻撃の起点として渋く光っていた山根からのロングパスを左サイドでトラップ一発で受けると、そのままトップギアに入れて疾走!正直、途中で心が折れたのではないかとすら思わせた彼のどこにそんなスピリットが残っていたのだろうか?という程のキレのあるドリブル発動!佐川東京サポーターの「行け!そのまま行っちまえ!」という声が届いたわけではなかろうが、栃木のDFをぶち抜いてPA内に侵入。そのまま抉ってゴールラインギリギリでクロス。 ふわりと柔らかく上がったボールがゴールぎりぎりファーサイドに流れていく。そこに飛び込んできた笠木新が、角度が「全く」ないにも関わらず、迷うことなく右足でドン!ダイレクトで蹴りこまれたボールはゴールポストの表面を撫でるように当たってゴールラインの内側へ。必死にクリアに行くGKに当たって(当たらなくてもゴールには向かっていたが)なんとゴールイン!「ファンバステン!」という声さえも上がったこのゴラッソは、試合を二転三転させてしまったことへのちょっとした神様の贈り物だったろうか?という事はマグレ?いやいや、狙った時点でこれは実力、ということで。まんまとオイシイところを持っていった(笑) とにかく、勝った。おそらくこういった「不思議な」試合は年に一度くらいはあるのかもしれない。栃木の選手や関係者、ファンが引き上げていく際の何か諦めとも怒りともつかない、嘆くでも笑うでもなく、という複雑な表情が印象的だった。おそらく、負けたという気はしていないのかもしれない。こうした試合を、われわれはあきらめずにモノに出来た。これは本当に凄いと思う。勝負に徹したベンチワークと気迫を前面に押し出すプレイが、敗北に向かう流れを無理矢理手繰り寄せた。各人の戦い振りは、本当に痺れる、心をゆさぶるものがあった。またしても感動した。 …しかし、勝ったから言うが、こういう試合はあくまで個人的にはだが、あまり好きではない。フットボールにはフットボールの文脈があり、流れがある。昨今のEUROなどを見ていても各国のレフェリーは、 各々個性豊かに、時には笑顔さえも交えながら、フットボールの美しい流れを絶やさないようにしていた。この日の田尻氏には決定的にみられなかった「ゆとり」が彼らにはとりあえずあったのではないか?…まあ、勝ったからこそ言える。(負けていたらどうなる事か・笑) 追伸。田尻智計様。日本のフットボールの発展には、あなたのような若い世代のレフェリー諸氏の強い意志と弛まぬ努力と精進が必要なのです。これからもどうか頑張って下さい。そして、また、いつの日か佐川東京の試合の笛を吹く機会があれば、そのときは、大事な限りある選手の寿命を縮める心配のない場と、淀みないフットボールの美しい流れを作って頂けますことを、この場にて心からお願いします。(K) |