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JFL 第29節  27/11/2004 13:00 K.O.

ザスパ草津 0-0 佐川急便東京SC

群馬県立敷島公園サッカー・ラグビー場 晴・強風

正直なところ、ザスパ草津がJリーグに参入できるかどうかという事には、全く興味がない。僕にとってはどうでもいい。

順位が確定するこの終盤の時期に、こういった相手とアウェイでやるというのは、はっきり言って やり辛いな、という感じばかりが先に立つ。そういえば、去年のジヤトコ戦もこんな感じだったか。シチュエーションこそ、全く正反対だったが。

そんなわけで、特別いれ込むような事もなく、混沌とした日々の中で時間が取れたという事だけで、とりあえず電車に飛び乗った。 途中で仲間に電話をすると、既に会場についているとの事で、やたらと「まるでJリーグっすよ」と「凄い雰囲気っすよ」をわざとらしく連発していた。 なるほどそういう感じか、と一人納得しながら、どうにも中途半端な距離感の各駅停車の旅を続ける。

目前の高崎で30分ほど足止めを食ったので、ビールを買う。時間もギリギリだったので、前橋駅からはタクシー。愛想の良い地元の運ちゃんは、行き先を聞くや僕をザスパのファンだと思ったらしく、 いろいろと話をしてきた。

「ザスパは凄いよねー。Jリーグに行くんでしょう?」「なんか、温泉宿で働きながら練習してるんだって?偉いよねぇ。」「努力してるんだよねー。小さな町で…。」

広告代理店のイメージ戦略通りだな、と心の中で苦笑いしながら「そうみたいですね。」と他人事のように返事をしている僕に、運ちゃんは訝しさを感じたかもしれないが、 それでも「大したもんだ…」と繰り返していた。運ちゃんはやや間を置いて「群馬も、ずっと景気が悪いままだからね…。これで、少しでも盛り上がってくれれば…。」 とつぶやいた。広告代理店のコピーにはない言葉だった。

会場に着くと、メインスタンドは満員。芝生席にも沢山のファンが集まり、ほぼピッチレベルのゴール裏にも立ち見客があふれていた。さほど大きくないハコながら埋まりきっている。 しかし、何かが違う。この微妙に芽生えた感覚が、試合の終わり頃にははっきりとした違和感として僕の中でしこりのように残った。

この試合の一つのテーマとして、強風への対処があった。佐川東京は、草津ほどではないが、攻撃時のロングボールのウェイトが大きい。追い風に立った前半は、いつも以上にラインをコンパクトにまとめ、前線が動き回ってつないで攻撃を組みたてる。 今シーズンワーストに近い試合を演じた前節に比べて、実に動きが良い。前線の3人、尾上、山根、山本が、時には裏を狙い、ドリブルでしかけ、楔を受け…と、さまざまな手段でソリッドなザスパ最終ラインを脅かしていった。その中でも山本正男が輝いていた。 劇的な逆転勝利の立役者となった前期大阪戦以来のキレっぷりであろうか。キープ、ドリブル、飛び出し、シュートと思い切りの良い勝負への仕掛けと、そうかと思えば相手をあざ笑うようなトリッキーなパスレシーブでゲームの主役となった。それでこそ、10番だ。

ゴールキーパーからのキックが風に押し戻されて垂直に落ちていくような状況だけが、草津の攻め手を失わせたわけではない。ビッグマッチで俄然ハッスルする熊谷からの美しい中距離パスがザスパのサイドの裏にピンポイントで通る。いつもながら、このパスの精度は一級品だ。溜息が出る。そして池田がこれを受け、抉る。 さらに中払が良く効いている。危険を察知し、早めに摘み取り、正確につなぐ。汚れ役も厭わない。ボランチの位置での勝負は、完全にこちらが上回り、その為、ザスパは前線と最終ラインが常に分断されているような状況にあった。池田は、もっと高い位置でプレイして欲しいとおもったが、草津のサイドアタックを封じる意図もあったのだろう。深い位置取り。

ほぼ、こちらのゲームプラン通りに進んだ。しかし、もともとスピードに長け、ボールがないところでの動きに上手さを見せる吉本擁する草津前線の愚直なまでの裏狙いの前に、大きなスペースを与えるリスキーな守備に臨んだDFラインは、何度もピンチに陥った。綱渡りながらも水際で防ぎ続ける佐川東京DF陣と、前に出続けた加藤であった。力で押す草津に対してテクニカルに試合を運ぶ佐川東京という構図が、微妙な均衡を保ち、試合が推移する。 それにしても、満員のアウェイという雰囲気が全く感じられない。確かに派手さには欠けたし、レフェリングにも不安定な部分はあったが、それでも好試合ではあった。なのに、ひとつひとつのプレイに対して反応が鈍い。拍手も歓声も起きない。そして全体的に常にそわそわと落ち着きがない。レプリカシャツとタオルマフラーで決めたはずのファンが、試合中なのに良く席を立つ(苦笑)。沢山のサポーターによるチャントは響いていたが、目の前の試合と響き合うような空気は、乾いた風にさらわれてむなしく拡散してしまうようだった。

後半、やや風は弱まったものの追い風に立ったことで、さらに裏狙いに拘る草津に対して、佐川東京も小幡を投入し、スペースを突く。セットプレイも含めてお互いチャンスはあるが、守備ラインが良く奮闘し、均衡は破れない。ゴッドハンドもダメ(苦笑)そうこうするうちに、ファウルは増え、また膠着を呼ぶ。結局スコアレス。

内容は良かった。なにより守備陣が粘りを取り戻したのが嬉しい。今の佐川東京のフットボールは、攻撃への意識が強いが、それだけに守備の安定は試合をものにする上での第一条件になる。前半見せた攻撃陣の溌剌としたプレイぶりも収穫だった。しかし、やはり、もう一つ試合を決める為の何かが足りない。ボール保持は下回っていたと思うが、崩したシーンと決定機の多さはこちらが上回っていたのではないか?勝てたはず、というより、これだけの試合運びをした以上、アウェイとは言え勝たねばならなかった。 しかし、参入のかかったホーム最終戦にも関わらず、能動的な試合運びを投げ捨てたかのような草津の戦いぶりにはより強い苛立ちを感じた。首をかしげる僕をよそに、ホーム最終戦という事で、場内を一周する草津のイレブンは概ね屈託のないような笑顔で手を振っていた。これは折込み済みなのか?そういう疑念すら起こさせる。と、言っては言い過ぎか?

居心地の悪さを感じつつ、引き上げようとすると、なぜか何人かの地元の草津ファンの方が、話し掛けてきた。「最終節に決められるかどうか?」「Jに行けるかどうか?」直接話した以外にも少なくとも僕が聞いたものの中に、たった今終わったばかりの試合内容に触れるものは一つもなかった。 「3位でも行けるんですよね」僕の感じていた違和感の原因が、なんとなく分かった気がした。

他人の事は、いい。佐川東京のオーディエンスは、まだまだ少ないし、スタンドには草津の事を言えるほどの空気も醸成されていない。しかし、少なくとも彼らは純粋に佐川東京のフットボールを楽しもうとしているし、意識的に 佐川東京を見ようと足を運んでくれているファンは、かなり増えてきたと感じる(昔はほとんど関係者ばかりだったが…)。ドライながらも、展開次第ではピッチと一体になれる。僕は、この、いかにも東京人らしいと言えるかもしれない今の空気感が好きだし、これからもこれを大事にしてくれれば、と個人的には思う。進化を止めてはいけないが、一足飛びにする必要はない。

お祭りのようにごったがえす人波を掻き分けるようにして、会場をあとにする。メディアやリーグの意図する通り、来年から彼らとガチ試合をやることもなくなるだろう。 ザスパ草津は、ほんの少しの違和感のみを残し、この地方特有といわれる一陣の乾いた風とともに、僕の目の前からどこかへ飛んで行ってしまった。(K)