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第83回天皇杯東京都予選”東京都サッカートーナメント”決勝 05/09/2004 15:00 K.O. 横河武蔵野FC 0-5 佐川急便東京SC 国立スポーツ科学センター西が丘サッカー場 くもり 5点差という試合結果には、さほど驚きを感じない。セミファイナルでの両チームのゲームを見て、もしかしたら、これくらいの試合にはなるだろうな。と、おぼろげながら感じていた通りの事になった。それだけである。 では、なぜこういった結果を得たか?この試合は、東京メトロポリタンTVでも、録画中継されたので、それも見た上で、今一度考えてみた。TVカメラを通じて、ブラウン管越しに観る佐川東京の戦いぶりには、スタジアムで生で観た時とはまた違う新しい発見があった。 運動量、オフザボールの動き、前線からのチェイス、少ないタッチでのパスワーク…。ポゼッションフットボールを実現する上で必要となる、あらゆる要素を、佐川東京のイレブンは90分間、忠実に実行していたことが良くわかった。前半の立ちあがりの時間帯を過ぎてからの、コンパクトにまとめられた中盤の組織的な連動プレスディフェンス。 後半、オフサイド(TVで見た限り、オンサイドだった)にはなってしまったが、熊谷→井上公→山本スルー→馬目→山本ミドルシュートの流れるようなプレーに代表される、システマティックな攻撃。正確無比なパスレシーブが際立った、このところ好調の熊谷と、足を引きずりながらも献身的な守備とつなぎを見せた中払のコンビを中心とした全員の統一された意思にもとづく 組織のフットボールであった。それは僕が思っていた以上の完成度であった。 最終的には大差となったが、序盤はむしろ、佐川東京のバックラインに処理ミス等もあり、決して完璧とは言いがたいものがあった。立ちあがりの時間帯に、これをつかれていたら、もう少し違った展開をたどったかもしれない。横河武蔵野は、スコアレスに終わったリーグ戦での守備的極まりない戦いぶりとは違い、ラインを上げて中盤をある程度コンパクトにまとめ、両サイドを使ったり、 距離の長いパスを裏のスペースに通して、チャンスを作ろうと考えているようであった。決して横河武蔵野が特別悪かったわけではない。むしろ、意図は感じた。が、佐川東京の組織ディフェンスが発動し始め、中盤を寸断されると、手詰まりとなり、ロングフィードを佐川東京のバックラインの後ろめがけて蹴りこむばかりとなった。この試合では、両サイドの攻防がカギと考えていたが、池田は左サイドを制圧し、ミドル、正確なクロスを何本も放ちチャンスをつくった。 右の井上公も、金載東相手に、苦しい戦いを強いられるかと思いきや、機を見て効果的な攻め上がりを見せた。金は攻めるにもパスは出ず、守備にも忙殺され、といった具合に中途半端な位置どりと、働きのみに抑えることができた。こうなれば、危険なのはあとは、ほぼセットプレイのみである。 横河武蔵野がある程度、中盤でのプレス合戦に対抗しようとしたその意識が、先制点の呼び水となったかもしれない。持ち前の左右をワイドに使う展開から、一旦、伊藤へパスが出る。この日、攻撃的な働きが非常に目立った伊藤からのフィードがまっすぐに前線に伸びる。横河武蔵野の守備ラインはこの前の時点で前に詰めていたので、裏にスペースをあけていた。そこに実にタイミング良く走りこんでいたのは山根だった。 山根はほぼトップスピードでDFと並走しながら、後ろからのボールを右足を伸ばしてミート。ボールは、まさかこんなことになるとは思っていなかったであろう、前に出ていた横河GK井上の横をあざ笑うように通過してゴールイン。かつて、アレッサンドロ・デルピエーロが一躍世界的に有名になるキッカケとなったフィオレンティーナ戦でのゴールを彷彿とさせる、と言ったら言い過ぎだろうか?そんなゴラッソだった。現場ではイマイチ良く見えなかったが、 TVで見て、改めてその凄さが良くわかった。 後半に相手クリアボールを叩いてドッピエッタ。得点のみならず、山根は効果的なスペースへの動きで、まさに神出鬼没の働きだった。こんな選手が敵じゃなくて良かった…、と妙に安心した(?)。それ程の、このところの充実ぶりである。さて、この山根による3点目もそうだが、熊谷の放った目のさめるような素晴らしいボレーによる2点目も、横河武蔵野の選手のクリアボールを拾ってのものであるが、両方とも馬目や竹谷によるチェイシングがキッカケとなっている 事も述べておきたい。前線からの守備の意識。ボールを奪う位置が高ければ高いほど、得点につながる可能性は高い。これも組織フットボールにおける、重要な要素だ。馬目と、竹谷はこれ以外にも、得点にはつながらなかったものの左右のクロスに何度も身体を投げ出して、ゴールに迫りつづけた。本当に良く戦った。次は決まるだろう。 熊谷のミドルで、90%決まった試合であったが、ベンチは足の状態が思わしくなかった中払→山本を皮切りに、竹谷→戸田、馬目→小幡、と3枚のカードを全て攻撃的な交代にあてた。攻撃は最大の守備、ということか。これが功を奏して、正男のパスを受けた小幡による、右45度からの〆のゴールとなった。序盤はばたついたものの、守備ラインも、中盤のプレスが効き始めると安定を取り戻した。横河武蔵野にも決してチャンスが無かったわけではない。が、3バックは、村山、小林に対して全てキッチリ身を寄せており、真の決定機と呼べるほどのものは、ほとんどなかったように思う。 こうして見ると、この結果には、「決定力の差」「個々の能力の差」といった、良くある言い回しでは表現しきれない理由がある事がわかった。攻撃的かつ、高度な組織フットボールを目指す意識の差、地道なひとつひとつのプレーでそれを実行しつづける強い意志の差…、そういった意識の差が透けて見えた。開幕前、其田監督は「継続、連続、連動」という3つのフレーズに、高度な組織フットボールへの強い意志を、あらわした。ここまで、試行錯誤はあったが、これだけの事ができるのだという見本のような試合を出来たと言える。そういえば、其田監督と言えば、選手時代、一世を風靡した国見高、横浜Fと日本における「組織サッカー」の黎明を身をもって体験し、実現してきた人だ。試合後、万歳をする選手達の屈託無い、実に素敵な笑顔には、 優勝をしたという結果よりも、これだけの試合ができたという事への満足感が表れていたように思った。 だが、わざわざ僕が言うまでも無いが、優勝とは言え、通過点の一つに過ぎない。天皇杯においては、J1クラブに当たるまでが「予選」だと思っている。そして、J1に対してもこの日のようなフットボールを見せつけ、勝ってもらいたい。佐川東京なら、出来るはずだ。リーグ戦も再開される。次の相手はHondaだ、絶対に勝てる。勝たなければならない。(K) |